我が子へのマナー第8回

┃現実とデジタル、複数の「世界」を使い分ける力

今回は、大きな反響をいただいた「子供のゲーム依存・ゲーム脳を予防したい」の続編です。

私が提案した「世界間移動力」の高め方をご紹介したいと思います。

とくに、幼いお子さんの「世界間移動力」の高め方を解説していきます。

まず、おさらいですね(^^)

「世界間移動力」とは、この現実という「世界」とデジタルという「世界」のあいだを、自由に行き来できる能力。

さらに、デジタルからデジタルという「世界」のあいだを自由に行き来できる能力です。

複数のデジタルデバイスを装着して世界を眺める少年

といっても、それらをバリバリ使いこなせる「意識高い系」になろうという提案ではありません。

いずれかの「世界」にどっぷりつかって抜け出せなくならないように、世界を使い分ける力。

どの世界にも飲み込まれずに、囚われずに、自由に世界を移動できる力。

それが世界間移動力です。

たとえば、ゲームのメタバース空間にどっぷりつかって、学校にも行けなくなる。

また、サブスクの動画にハマって、ご飯もろくに食べず、睡眠不足で健康に支障が出る。

一方、それらの状態を恐れるがあまり、ゲームやデジタルコンテンツを極度に遠ざけて、現実の世界のみで生きていこうとする。

このように、決まった世界にこだわりすぎることで人生に悪影響をおよぼすことを防ぎつつ、これからの時代の人生の選択肢を大きく広げてくれる力。

それが「世界間移動力」です。

だから、「リアルの世界が一番素晴らしい!」という論調とは一線を画します。

どの世界が一番素晴らしくてもかまわない。

「ホーム世界」はどこでもいい。

ただ必要に応じて、ストレスなくスムーズに世界を「移動」できる能力なのです。

┃「世界間移動力」を高める「お帰り法」とは?

草原で子供を抱きしめる母親

一つの世界に囚われない「世界間移動力」は、どうすれば身につくのでしょうか?

とくに幼いお子さんであれば、それを親御さんがリードしていかなくてはなりません。

なかなか難問です。

明確な答えはないでしょう。

なぜなら、ここまで現実以外の「別世界」が発展した状況に、人類は直面したことがないからです。

以前、「親も一緒に別世界に行き、一緒に帰ってくる」という方法をご紹介しました。

しかし、親御さんも忙しく、必ずそれができる状況ではない場合も多いですよね。

そこで今回は、我が家でうまくいった(ように現時点で見える)別の方法をご紹介したいと思います。

それは「お帰り法」と私が名づけた方法です。

ゲームやデジタルコンテンツは、現実から見て「別世界」です。

子供がそれらを楽しむということは、「別世界」に出かけていってるわけですよね。

なので、子供が一人でサブスク動画を見るときでも、我が家では必ず「行ってらっしゃい」と言うようにしています。

そして、時間が来たら「帰っておいで~」と声をかけて、こちらに来てくれたら「お帰り!」と言って、ギューっと抱きしめることにしています。

「帰ってきてくれてうれしいよ」と、声をかけることもあります。

今までは、時間を決めて声をかけても無視したり「もうちょっと~」と言っていたのが、すんなりテレビを消してこちらに来てくれるようになりました。

子供としても、ただ褒められるのと違い、親のところに「帰る」という温かみを感じてくれているのではないかと思います。

それが、以前よりもスムーズに現実と「別世界」を移動させているのではないでしょうか。

アダルトチルドレンパパママは、ご自身がこの「お帰り法」のように温かく受け入れてもらったことがない方が多いですから、とまどうかもしれません。

だから、ここはひとつの頑張りどころだと思います。

これをくり返すことで、あらゆる世界間を移動する基礎体力が高まってくれると期待しています。

その後の経過は、いずれまたこの連載でご紹介していきたいと思います。

┃スクリーンタイムをチケット制に

もちろん、「お帰り法」を実践するためには、これまでの蓄積も必要です。

事前にゲーム・デジタル依存について(怖がらせないていどに)なんども説明し、理解しておいてもらう必要があります。

また「動画とゲームは合わせて60分」など、スクリーンタイムのルールを決めておくことも重要です。

以前もお話ししましたが、アダルトチルドレンパパママはルールを課すのを避けたいと思っている方が多いですよね。

なので、ここも頑張りどころです。

とくに、時間の制限を子供に守ってもらうのは難しい。

時間という漠然としたもので、幼い子の行動を制限するのは至難のワザです。

そこで我が家では、少しでも子供が時間を意識しやすいように「チケット制」を設けています。

チケット1枚30分、1日3枚使っていい。

それをいつ使うか、自分で申請してもらうようにしています。

私も妻もテレビは見ないので、子供は自分なりに考えて意外と3枚きっちり使いきります。

さらにそれを効率的にできるように、子供が帰宅したら真っ先に一緒に「今夜の予定」を立て、紙に書いてもらうようにしています。

何時から何時に何をして、チケットはここで使う、と。

最初は、子供を規制しすぎかなと迷いましたが、相手はゲームやデジタルコンテンツという超魅力的な強い引力です。

やりたいこと抑圧するのではなく、子供の世界間移動力を高めるためと割り切って実践しています。

これも、我が家では今のところうまくいっています。

今のところ、ね(笑)

┃ゲーム機は子供ではなく「家族の共有財産」にする

もう一つ我が家で実践していることがあります。

それは「ゲーム機やデジタルコンテンツは家族のもの」にするという方法です。

以前、子供に「任天堂スイッチ買ってぇ~」とせがまれたとき、妻と話合いました。

こんなに早く買い与えて大丈夫だろうか、と。

そこで出た答えが、子供に買ってあげるのではなく「家族全員のもの」として共有財産として買うというものでした。

子供は意外と「自分の買ってもらったものは自分だけのもの」という意識が強いですよね。

それを避けて親も一緒に「別世界」に行けるように、家族全員のものにするという作戦をとることにしました。

そしてじっさい、はじめのうちは子供だけでゲームをしないという約束をしてもらいました。

「ディズニーランドがどんなに楽しくても一人で行かないよね?パパとママも一緒に行くから、みんなで楽しもう!」と。

デジタルな「別世界」を、遊園地などの現実で説明するとわかりやすいようです。

今のところ、これもうまくいっています。

┃デジタル化の激流は止まらない、そこに備える

サイバーチックな川が激しく流れている様子

いずれにしても、幼い子とゲーム・デジタルコンテンツのあいだを取りもつのは、本当にたいへんなことだと思います。

では、なぜ私がここまでして両者のあいだを取りもつのか。

つまり、安易に禁止せずに「世界間移動力」を重視するのか。

それは、「ゲーム・デジタルコンテンツが人生を破綻させかねないほど魅力的」にもかかわらず「今後容赦なくどんどん普及していく」からという「両極問題」を抱えているからにほかなりません。

普及どころか、メタバースの発展で、それがなくてはならない世界にどんどんなっていくでしょう。

この流れは、もはや止められないのは明らかですよね。

それを昔ながらの価値観でむやみに「禁止」することは、子供の「世界間移動力」を奪うことになるのではないか。

それでは将来「免疫」が薄い状態で超強力なメタバースに出会うことになり、逆にかんたんに一つの世界に飲み込まれてしまうことになるかもしれない。

人生の選択肢を広げることも難しくなるだろう。

AIの登場で、デジタル化の波はすさまじい勢いになってきていますからね。

激流です。

公園に行けば、男子中学生がみんなで集まって別々のゲームをしています。

女子高生は、二人で並んでそれぞれのスマホを見ながら黙々と歩いています。

今後、この流れはさらに社会とともに加速していくでしょう。

その激流のなかで、

「うちの子はゲームにハマらない子になるといいなぁ」

「デジタルコンテンツに興味もたないかも」

と期待はしないほうがいいと私は考えています。

しっかり備えることが大切でしょう。

┃デジタル化で子供たちも「苦行」を強いられている

しかめ面で、デジタル機器に囲まれている子供

問題を感じているのは、親だけではありません。

子供たちは自身、今、「苦行」を強いられています。

今やボタン一つ押せば、あらゆるアニメが「一気見」できる状況です。

それを途中でやめるのは、すさまじいストレスだと思います。

たしかに、私の子供の頃から考えたら夢のようです。

どんなにつづきを見たくても、翌週まで待たざるをえなかったのですから。

ついこのあいだまでだって、レンタルビデオ屋さんで大金叩いて全巻借りなければ見られなかった。

誰かが借りてたら、返ってくるまで見られなかった。

それが、ボタン一つで「一気見」可能なんですよ!

幼い子がこの誘惑に勝つのは、そうとうな気力を使っているはずです。

ゲームだって、発売日に並んでソフトを手に入れる必要もなく、ボタン一つでダウンロードです。

しかも、家にいながら友達や世界中の人と通信しながら、広大な世界で遊んでいられる。

そこから、口うるさい大人のたくさんいる現代の日本に帰ってこなければならない。

そのストレスも、すさまじいものがあるでしょう。

その点は、私たち親の側は理解してあげなければいけないところだと思います。

そのうえで、延々と「両極」の調整をしながら、子供の「世界間移動力」を育んでいく。

それが、私たち「現代の親」の役割なのではないでしょうか。

┃親も(気をつけながら)世界間を移動してみせよう!

デジタルデバイスを装着して複数の世界を横断する男性

この先、「世界間移動力」は必須の能力でしょう。

どこが「ホーム世界」でもかまわない。

でも幼い子にとって、今は、親がいるこの現実こそが「ホーム世界」だと思ってもらう必要がありますよね。

その「ホーム世界」と「別世界」を移動する。

まずはそこからはじめるための方法を、今回、私なりにご提案させていただきました。

あとは、親自身が世界間をスムーズに移動しているところを見せてあげるのが大切ですよね。

私も、自分のオンラインコミュニティ「Adic Salon」にメタバースのプラットフォームを取り入れるなど、「別世界」を移動するようにしています。

それ以外にも、AIとの会話や画像生成など、新しいデジタル技術があれば積極的に試して「別世界」を肌で感じるようにもしています。

ただアダルトチルドレンは、心の傷を癒すために、楽しいものや興奮させてくれるものにドップリつかってしまう傾向が強いですよね。

アダルトチルドレンパパの私も、容易に抜け出せなくなりそうなので早々に退散した「世界」も少なくありません(笑)

それでも、少しでもいいから、世界間移動力を高める努力をつづけ、新時代を生きる子供の足手まといにならないようにしていきたいと考えています。

※ちなみに・・・、このページのCGイラストはすべて、自動画像生成AI「Midjourney」が、私の要望に合わせて1分ていどで創ってくれたものです。そういう時代なんです・・・。

アダルトチルドレンの子育てを支える会会長
生きづらさ専門カウンセラー
しのぶかつのり

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