我が子へのマナー第13回

親目線から見た「親子の共依存」を防ぐ方法!

このコラムでは、アダルトチルドレンが子育てで「親子の共依存」にならないための方法を詳しく解説します。

世間では、子の目線から見た「親子の共依存」の対処法が目立ちます。

つまり、自分の親が過干渉してくるし、自分もそんな親を放っておけない、そのズブズブの関係をどう断ち切ったらいいのか?

とても深刻な問題ですよね。

情報が多いのもうなずけます。

一方、親の目線から見た「親子の共依存」の対処法は、とても少ないのです。

ましてや、子育ての段階で「親子の共依存」を防ぐための情報になると、より少なくなってしまいます。

さらに、アダルトチルドレンが親になったケースの情報となると、ほとんど見かけません。

ですので、アダルトチルドレンパパママさんが「親子の共依存」を防ぐための情報は、非常に貴重です。

ぜひ最後までお読みいただき、あなたの子育てに役立てていただけたらうれしいです。

共依存とは?アダルトチルドレンがおちいる罠

高校生の娘を抱きしめ切なそうな表情を浮かべる母親の写真

では、そもそも共依存とはなんでしょうか?

その定義はさまざまなので、あなたと共通認識をもてるよう、ここでおさらいさせていただきますね。

共依存は、「尽くされることに依存する人」と「尽くすことに依存する人」との依存関係をあらわします。

たとえば、暴力をふるい暴言を吐く夫と、その夫の世話をする妻などが典型的な例です。

夫は、どんなにひどい扱いをしても自分に尽くしてくれる妻に依存しています。

妻は、こんなひどい夫には私がついていてあげなければいけないという役割に依存しています。

つまり、お互いの依存が噛み合っている。

そのため、いつまでもこの問題は解決せず、ズブズブの関係がつづいていくのです。

はたから見ていると、なぜ妻がそんなひどい目にあってまで役割に依存するのか不思議になります。

しかし、妻はその役割をになうことによって、自分は人を支えている、自分は役に立っているという深い承認欲求を満たしているのです。

そして、夫も、妻へのひどい扱いをエスカレートさせることによって、妻の献身を確認し、深い承認欲求を満たしています。

ですので、共依存とは「承認欲求と承認欲求の依存関係」でもあるのです。

強い承認欲求に悩まされるアダルトチルドレンにとって、共依存は「おちいりやすい罠」だということですね。

共依存はもともと、アルコールなど、依存症の患者さんの家族や友人が「助けすぎる」ことで、患者さんの回復が遅れるというケースで広く使われるようになりました。

つまり、患者さんは家族や友人の助けに依存していて、家族や友人は助ける役割に依存している。

互いの立場で承認欲求を満たし合っている。

そのため、なかなか問題が解決されないどころか、エスカレートさえしていってしまうのです。

それが共依存という問題の、とても難しいところだと言えるでしょう。

▼参考文献
WIKIPEDIA The Free Encyclopedia「Codependency」

このコラムでは、今見たように、共依存という言葉を

・「尽くされることに依存する人」と「尽くすことに依存する人」の依存関係

・承認欲求と承認欲求の依存関係

として使っていきます。

「親子の共依存」とは?

今解説させていただいた共依存。

これが親と子の関係のなかで生じているのが「親子の共依存」です。

これには、二つのパターンがあります。

1.親が子に強く依存しているパターン

2.子が親に強く依存しているパターン

ただ、「共依存」ですから、どちらか一方が依存しているわけではありません。

1と2、どちらのケースも、親子ともに依存する関係が成り立っています。

では、それぞれの具体的な事例を挙げていきますね。

親が子に依存する具体例

男の子を必死の表情で追いかける母親の写真

まずは、親が子に依存するケースです。

親の典型的な依存行動を、20個に絞ってご紹介します。

子への依存を防ぐのに役立つと思いますので、ぜひ参考になさってみてください。

1.子供の恋愛や結婚に干渉し邪魔をする

2.子供に悩みやパートナーの愚痴を毎日のように聞かせる

3.子供に過剰なプレゼントをして見返りを期待する

4.自分の苦労や疲労をやたらと子供にアピールする

5.自分の能力や過去の栄光を子供にアピールする

6.子供の学校の成績や学歴に過剰な期待を抱く

7.子供の抱える問題を代わりに解決しようとする

8.些細なことから重要なことまで子供に決めてもらおうとする

9.子供の態度に過剰に反応する

10.「子供のため」だと言ってやりたいことを我慢する

11.子供が自分の人間関係のすべてになってしまう

12.子供に自分の趣味や興味を押しつける

13.子供に自分の価値観や感受性を押しつける

14.子供の独立を阻止しようとする

15.子供の就職先に口を出す

16.子供の自立した行動をバカにする

17.子供を見下す発言が日常になっている

18.自分のミスを子供になすりつける

19.自分の夢を子供に託す

20.自分たちの不幸を子供のせいにする

いかがでしょうか?

もしあなたがアダルトチルドレンパパママさんで、お子さんへの依存を防ぎたいと感じておられるのなら。

以上の事例にご自身が当てはまるものがないか、ぜひチェックしてみていただけたらと思います。

当てはまるものがあっても、決してご自身を責めないでくださいね。

アダルトチルドレンという苦しみを抱えながら、こうしてお子さんのためにネットで検索し、子育てに活かそうとされている。

それだけで充分、あなたは真摯に子育てに向き合っておられるのですから。

そのうえで、このあと紹介する「親子の共依存」を防ぐ対処法を試してみてください。

子が親に依存する具体例

足並みを揃えて必死の表情で走る通勤中の父親と通学中の息子の写真

次に、子が親に依存するケースです。

こちらは、子供の典型的な依存行動をご紹介します。

1.学校でトラブルがあると、親に「代わりに解決して欲しい」と頼む

2.外食のとき、頼むメニューを親に決めてもらう

3.大人になっても、嫌なことがあったらまず親に慰めを求める

4.親の許可がないと友達と遊べない、外出できない

5.学業やスポーツの成績は親からの評価をもっとも重要視する

6.就職活動で親の希望を最優先する

7.電話やメールで親に頻繁に連絡を取りたがる

8.家に親がいないと不安を感じる

9.親にほめられたり、認めらると気分が高まり興奮する

10.思春期を過ぎても親との仲の良さを周囲にアピールする

以上、ほんの一例ですが、子が親に依存する具体的な事例をご紹介しました。

ただ、あなたはもうお気づきだと思います。

じつはこの状況も、その奥で「親が子に依存している」のです。

子に求められることで、自分の存在価値を感じて「ああ、私は必要とされている」と満たされる。

そのため、子供がいつまでも自立できない。

共依存は、こうして互いの結びつきを強めていき、そうかんたんには解消できない過度に近い親子関係をつくっていってしまうのです。

ですので、親子の共依存を防くためには、ぜひこれらのケースもしっかりチェックしてみていただけるといいと思います。

「親子の共依存」を防ぐポイントと対処法

高校生の男子と母親が青空の下で握手を交わしている写真

ではいよいよ「親子の共依存」を防ぐ対処法をご紹介したいと思います。

まずは、そのために抑えておきたいポイントがあります。

そのポイントは、私自身の子育て、そして多くの方のカウンセリングさせていただくなかで、「親子の共依存」を防ぐために「ここだけははずせない」と痛感しているポイントです。

それは、子供への「所有感」に焦点を当てるということ。

つまり「この子は私のもの」という感覚に気づいていくということです。

自分の子供への「所有感」は、親と一体化していてなかなか気づくことができないし、気づいてもなかなか手放せません。

でも、そもそも子供は「私のもの」ではありません。

それは常々申し上げているとおりです。

▼参照記事
子供を「私の所有物」にしない

それを「私のもの」だと勘違いしているから、自分の承認欲求を満たしてもらうなどというもっともたいへんなことを、子供に押しつけてしまうわけです。

だからその勘違いを手放していく。

つまり、子供は「私のもの」ではないという「事実」を、たんたんと自分に知らせていくことが大切なのです。

そうなんです。

とてもシンプルです。

シンプルだからといって、かんたんなわけではありません(笑)

ものすごく難しいです。

具体的な対処法もシンプルです。

たとえば、先ほどの具体例のような状況に気づいたら、「あ、子供を私のものにしていたな」と口に出してみる。

また、その具体的な状況を、一行でいいからスマホにメモしておく。

「子供のオヤツを、子供から頼まれて私が決めてしまった」

そのくらいの短さでかまいません。

こうして、自分が子供を「私のもの」だと思っている「事実」を確認しつづけていきます。

無理に「私のものだと思わないようにしよう」と自分を抑えつけるする必要はありません。

なぜなら、それらは自然と湧いてくる思いだからです。

それを毎回無理やりコントロールしようとすれば、反動で、暴発してしまうかもしれません。

だから、たんたんと「事実」に気づいていけばいい。

自分が我が子を「私のものだ」と感じているという「事実」。

その「事実」を眺めつづけ、受け容れていくのです。

これは自分を責めるためのものではありません。

また、ミスを数えるためのものでもありません。

完璧にやろうとする必要もありません。

あなたはもう充分に頑張っています。

だから、たんたんと「事実」に気づいていくだけでいいのです。

いかに自分が子供を「私のものだ」と考えているかという「事実」を、たんたんと自分に突きつけつづけていく。

そうすることで、共依存の行動に事前に気づけるようになり、自然とそれらの行動をとらない方を選択できるようになっていきます。

シンプルで地味な方法です。

ただ、つづけていけば、徐々にですが着実に効果を感じやすい対処法なので、ぜひ試してみてくださいね。

共依存のメリット

ではここで、「親子の共依存」のメリットについて考えてみましょう。

共依存にはデメリットしかないと考えられていますが、メリットがあるからそこにハマって脱け出せなくなるのです。

だからそのメリットをしっかりと意識しておくことは、とても重要です。

そうしなければ、気がつくとまたそのメリット飲み込まれてしまうでしょう。

「親子の共依存」には、主に三つの大きなメリットがあります。

ぜひ一緒に見ていきましょう。

1.孤独を感じにくくなる
共依存におちいりやすい親御さんは、孤独を感じている方が非常に多いです。

常に子が自分のそばにいてくれる「親子の共依存」は、その孤独を癒してくれます。

子の側も、それが親のエゴだと気づくまでは、孤独を感じずに過ごすことができる。

双方ともに孤独を感じなくてすむことが、大きなメリットとなっているのです。


2.自分の存在意義を感じられる
私はなぜ存在しているのか?

この問いを突き詰めて考え、迷いなく「〇〇のためです」と答えられる人は少ないでしょう。

でも、アダルトチルドレンは生きていること自体が不安なため、ときおりこの問いにとりつかれてしまいます。

そんなやっかいな問いをから解放してくれるのが「親子の共依存」です。

お互いに「子のため」「親のため」という答えをもっているので、自分の存在意義を問うことすらなく、目をそらしつづけることができるのです。


3.深い愛情を感じられる
親子の共依存には「無茶な要求」がつきものです。

なぜなら、その要求が無茶であればあるほど、かなえてもらうことが愛の強さの証になるからです。

かなえる側も、自分が無茶をすればするほど、相手への愛を証明していることになります。

「親子の共依存」は、絆の深さや愛情の「確認作業」なのです。

どうでしょうか。

どのメリットも、ものすごく根源的なメリットだと思いませんか?

「親子の共依存」で感じられるメリットは、表面的なものではない。

だからこそ、知らずしらずのうちにそちらに流されていき、いちどハマるとそうかんには脱け出せなくなってしまうのです。

共依存のデメリット

次に、「親子の共依存」のデメリットも見ておきましょう。

たくさんあるので、親子ともに生じるデメリットに絞り込んでみていきましょう。

それをこうして「見える化」して知っておくだけでも、共依存の状況に気づきやすくなりますよ!

1.成長の邪魔をし合ってしまう
相手が成長することは、自分から離れていくことなので、相手の成長のチャンスをつぶし合うことがよく起きます。

2.精神的に自立できない
お互いがお互いの承認欲求を満たしているので、自分で自分を承認しなければいけない「精神的な自立」ができません。

3.自己決定能力が低下する
決めてもらったり、勝手に決めたりばかりしているので、自分のことを自分で決めることができなくなっていきます。
また、お互いの都合を言い訳にして、なかなか決めようとしないケースもよく見られます。

4.コミュニケーションスキルが偏る
親子間以外の人間関係がなくなるケースが多いため、コミュニケーションスキルが著しく低くなってしまう場合があります。

5.他人の評価や承認に依存する傾向が強化される
自分で自分を承認する機能がすっかり損なわれ、親子以外にも、だれかれかまわず承認を求めるようになり、なにをするのも他人基準で動くようになっていきます。

こちらも、なかなかインパクトの強いデメリットですよね。

人と人のあいだで生きていく、根本的な生きる態度やスキルが壊れていく様子がうかがえると思います。

どんなにメリットがあったとしても、とても健全な状態とは言えそうもありません。

先ほどご紹介した「親子の共依存」を防ぐ方法に取り組んで、ぜひこれらのデメリットに襲われない親子関係を築いていただけたらうれしいです。

あなたは「子心」を大切にしている人

リビングで楽しそうに話をする母親と小学生の女の子の写真

最後に、大切なメッセージを。

冒頭で申し上げたとおり、「親子の共依存」を親目線で防ぐための情報はとても少ないです。

子目線の情報はたくさんあるのにです。

これってつまり、共依存で自分の子供に迷惑をかけていると自覚している親が、かなり少ないからですよね。

そもそも、親の側は「親子の共依存」に気づいていないのです。

「親子の共依存」を防ごうとするより、もっともっと以前の段階。

なので、そういう情報が求められていないのだと思います。

ではなぜ、親は「親子の共依存」に気づけないのでしょうか?

もちろん、理由はさまざまあると思います。

大きな要因の一つとして挙げられるのが、やはり「子供は私のものだ」と感じている親特有のエゴのためでしょう。

これが、「親心」というナルシスティックな言葉で肯定され、親側から「親子の共依存」が発見できない要因の一つになっていると考えられます。

そのような方が、もしこのコラムを目にしたとしても。

ご自分が「親子の共依存」におちいっていることに、気づかないと思います。

それくらい「親心」って、私たちの視野を狭くさせる恐ろしいものでもあるんですよね。

そのなかで、あなたのように「親子の共依存」を意識してそれを防ごうし、このコラムを最後まで読んでくださる人がいる。

それはあなたが、「親心」より「子心」を大切にしようとなさっていることの証だと思います。

そして、ぜひそのあなたの感性を、子育てに活かしていただければと思います。

私も、あなたを応援できるコラムを、これからも届けつづけたいと思います!

一緒に、アダルトチルドレンの子育てを乗り切っていきましょう!

アダルトチルドレンの子育てを支える会
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