「我が子へのマナー」第23回
反抗期、とくに思春期のお子さんへの接し方、迷いますよね。
迷うだけならいいですが、私たちアダルトチルドレンにとっては恐怖ですらあります。
一つ対応を間違えば、自分の子供をアダルトチルドレンにしてしまうのではないか・・・。
そんな切実なプレッシャーに襲われて、反抗期のお子さんへの接し方に苦労しているアダルトチルドレンパパママさんは、とても多いんです。
┃非常に危険な考え方
そこでネットの記事を検索してみると、次のようなアドバイスをよく見かけます。
子供の反抗期に苦労するのは、子供の反抗期を悪いものだと思い込んでいるから。
そのネガティブな思い込みを外せばいいと。
たとえば、
「反抗期でもOK!」
「ラッキー、これは子供が自立している証拠!」
ととらえてみる。
そんなふうに言葉の使い方を変えれば、思い込みを外せるとのこと・・・。
一般的な親御さんであれば、それでうまくいく人もいるでしょう。
ただ、もしうまくいったとしても、この考え方は非常に危険でもあるんです。
とくにアダルトチルドレンパパママさんは、注意する必要があります。
┃反抗期のお子さんの「SOS」を見逃さないために
なぜ、反抗期についてのネガティブな思い込みを外すことが危険なのか?
それは、お子さんの反抗的な態度が、親に出しているSOSの可能性もあるからです。
それをポジティブに、
「反抗期でもOK!」
「ラッキー、これは子供が自立している証拠!」
ととらえてしまったら・・。
お子さんのSOSを、みすみす見逃してしまうことになります。
たとえばお子さんを心配して「なにかあったの?」と声をかけたとき、
「あんたに言っても無駄!」
と悪態をつかれたとしましょう。
それは、なにか問題を抱えているけど、なにかしらの理由があって言えないということかもしれません。
だって、じっさいになんにも問題を抱えていなかったら「言っても無駄」という発言が出ないはずですから。
もしかしたらそれは、学校でいじめを受けているといった深刻な問題で、でも親には恥ずかしくて言えないと感じているのかもしれません。
これを、
「反抗期でもOK!」
「ラッキー、これは子供が自立している証拠!」
などととらえてしまっては、お子さんの危機を一緒に解決していく機会を失ってしまいます。
それは、お子さんにとって非常に危険なことでしょう。
┃なんでも反抗期で片づける親の末路とは?
また、お子さんに話しかけたら、
「マジでむかつく、ほんとウザい・・・」
と言われたら。
本当に私たち親の側が、その子にとって限度を超えた過干渉をしているのかもしれません。
なんといっても私たちアダルトチルドレンは、人との境界線を引くことがとても苦手ですから。
にもかかわらず、それをまた、
「反抗期でもOK!」
「ラッキー、これは子供が自立している証拠!」
などととらえてしまっては、子供はたまったものではないでしょう。
楽になれるのは親だけです。
そうなんです。
結局、ネガティブな思い込みを外して、ポジティブな言葉で心をコントロールするということは、自分が楽になりたいだけ。
親が自分の身を守るために、子供を犠牲にしてしまうことになりかねないのです。
┃反抗期の子供への接し方
ネガティブな思い込みを外すして、ポジティブな言葉でコントロールする。
それは結局、ネガティブからポジティブへ、思い込みを「横移動」させただけにすぎません。
言い換えれば、「狭い視野」から「狭い視野」に移動したに過ぎないのです。
だから重要なのは、ネガティブとポジティブを両方同時に見る「メタ視点」に立とうとすることです。
私たちはメタ視点に立ち、メタ思考することで、はじめて目の前のものごとに冷静に対処できるようになります。
参考文献:
しのぶかつのり「生きづらい原因への対処法」『生きづらい原因は脳の扁桃体?』2021年
ものごとには必ず、ネガティブな側面とポジティブな側面の両方がありますよね。
それは、お子さんの反抗的な態度であっても同じでしょう。
その反抗的な態度を、親の都合のいいようにポジティブにとらえるだけではなく、そこから発せられているネガティブなメッセージもしっかり受け止めていく。
そうしてはじめて、我が子の反抗期にしっかり対処していけるのではないでしょうか。
親が楽になりたいがために、子供の態度を「反抗期?自立しようとして、かわいいものだな♪」なんてばかり言っていたら、大事なSOSを見逃してしまうかもしれないのです。
それになにより、まさに「大人」になろうとしている我が子に対しても失礼でしょう。
┃アダルトチルドレンパパママが「思い込み」を外すのを避けた方がいい理由
ネガティブな思い込みを、ポジティブな言葉でコントロールしようとすることには、じつはもう一つ大きな問題があります。
それは、やればやるほど苦しくなって、反抗期の子供と接することがよりつらくなってしまう可能性が高いこと。
そしてなによりそのストレスが、お子さんに悪影響を与えてしまうことです。
アダルトチルドレンのもつ強烈なネガティブ思考は、とても粘着質です。
使う言葉だけでそれをコントロールするのは、とても現実的とは言えないですよね。
それにそのていどの努力は、アダルトチルドレンと自覚されている方であれば、生き延びるためにとっくの昔から取り組んできておられる方が多いです。
それでも変えられないから苦しいし、こうして悩んでいるわけです。
それを、また子育ての現場でもあらためて取り組めと言われたら・・・。
アダルトチルドレンパパママさんは、追い込まれてしまいます。
じっさいそのようなアドバイスを受けたことで、追い詰められているアダルトチルドレンパパママさんからのご相談をよくうかがいます。
日本社会は、問題があったらそれを消してしまおうとする「問題消去型」の社会です。
しかし、消せないものは消せませんし、変えられないものは変えられません。
できないことをやろうとすれば、それはとても強いストレスになります。
反抗期においてその強いストレスは、親子関係を致命的に悪くするきっかけになりかねません。
だから重要なのは、ネガティブな思い込みをはずすといった「問題消去型」のアプローチではなく「問題受容型」のアプローチ。
子供の反抗的な態度には、ネガティブな側面とポジティブな側面の両方があるという前提に立ち、その両方を見ようとすることが大事なのです。
そのメタ視点こそが、親を冷静にさせてくれるのです。
┃魔法のような解決策でなくてすみません、でも・・・
私たち親が大切にすること。
それは、子供の好ましくない行動を、たんに「反抗期だから仕方がない」と片付けるのではなく、その背後にある感情や意図を探り、適切なサポートを提供すること。
これはアダルトチルドレンであろうがなかろうが、同じではないでしょうか?
そして、ネガティブな思い込みからポジティブな思い込みに書き換えても、それは「狭い視野」から「狭い視野」に移動しただけにすぎません。
そこにはアダルトチルドレンにとって、「できないことをやろうとする」という苦しみが待ち構えている可能性が高いでしょう。
どうせ労力をかけるなら、より広い「メタ視点」に立てる方が建設的ですし、現実的ではないでしょうか。
もちろん、アダルトチルドレンパパママさんにとって、反抗期の子供に対処するのは、それでもとてもしんどいことでしょう。
だから、この問題はかんたんに解消することは難しいという覚悟はどうしても必要になってきます。
そして、できるだけ冷静に対応できるように、日々の暮らしのなかでメタ視点を養っていく。
その積み重ねが、やがて実を結んでいくはずです。
だから無理のない範囲で、つづけていってくださいね。
魔法のような解決策ではなくて申し訳ありません。
でも、嘘はつきたくありません。
ただここに、そのあなたの苦労を知っている人間が確実に一人いるということを、覚えておいていただけたらうれしいです。
一緒に乗り越えていきましょう。