我が子へのマナー第3回

┃「自分の意志があるのかな?」と心配になる

うちの子はどこか委縮している。
 
自由にふるまうことが苦手。
 
自分の意志があるのかなと心配になる。
 
アダルトチルドレンと自覚されている親御さんから、そんな子育て相談をお受けすることがよくあります。
 
こんな頼りないことで、うちの子は将来ちゃんとやっていけるのか・・・と。
 
たしかに心配になりますよね。
 
私も子育て中の親として、よくわかるつもりです。
 
もちろん、お子さんを頭ごなしに怒ったり、けなしたりしていたとしたら、委縮してしまいますよね。
 
でも、自分がされてきたことは自分の子供には決してしたくない。
 
だからそんなことはしていない。
 
いい親ぶったダブルバインド」にも気をつけている。
 
そして「腰の引けた子育て」で、ていねいに接している・・・。
 
そんな、我が子へのマナーをしっかり守っている親御さんからも、同じようなご相談をお受けするのです。
 
もちろん、いろいろな原因が考えられるでしょう。
 
でも、もしお子さんから「自由」の気配を感じられないのだとしたら。
 
「父母のダブルバインド」を疑ってみた方がいいかもしれません。
 
ダブルバインドとは、正反対の指示をして、子供の自由を封じ込めることですよね。
 
たとえば「好きなものを選んでいいよ」と言っておきながら、じっさいに子供が選ぶと「なんでそんなもの選ぶの?」と否定する。
 
また、迷っている子供に「早く決めなさい!」と怒っておきながら、子供が「ごめんなさい」と謝ると「すぐ謝るのは自分の意志がない証拠だ」などとそれも否定する。
 
つまり「行け!」と子供に指示を出しながら、子供のズボンのすそを踏んでいるような状態です。
 
すなわち「父母のダブルバインド」とは、夫婦で正反対の指示を子供に出している状態です。
 
これはまさに子供の「自由」を親が奪う行為。
 
完全に、我が子へのマナー違反だと言えるでしょう。
 
 

┃「父母のダブルバインド」が子供の自由を削り取る

「父母のダブルバインド」は、私たち親が子供にやってしまいがちな虐待です。
 
たとえば母親が、
 
「早くお風呂に入っちゃって!」
 
と急かすのに、父親からは、
 
「俺が先に入るから待ってろ」
 
と言われる。
 
また、母親から、
 
「こんな成績のままじゃ私立の中学にいけないよ?」
 
とけしかけられているのに、父親からは、
 
「うちには私立に行かせる金なんてないからな」
 
と言われる。
 
こうやって、子供がどちらに行こうとしても行けなくさせてしまう。
 
つまり、子供の自由を夫婦二人がかりで奪ってしまうのです。
 
これをお子さんが、
 
「お母さんと言ってること違うよ!」
 
「お父さんとちゃんと話し合ってから言ってよ!」
 
といえる風とおしのいいご家庭はいいでしょう。
 
でも、たいてい「父母のダブルバインド」をおこなうご夫婦は、どちらか一方だけでも、とても高圧的な態度の親である場合がほとんどです。
 
そのため、子供はひたすら自由を奪われていく。
 
「決めない」のではなく「決められない」。
 
「動かない」のではなく「動けない」。
 
どちらに決めても、どちらに動いても禁止されたことを破ることになる。
 
そして親の怒りの対象となる。
 
そうして徐々に子供の「自由」が削りとられていくのです。
 
 

┃「父母のダブルバインド」が起きやすい状況

別の方向を向く夫婦とその間にいる男の子のイラスト

現在、社会的な休校や休業で、家族全員で過ごす時間が増えている方も多いと思います。
 
この状況は「父母のダブルバインド」が起きやすい状況になっていると言えるでしょう。
 
今後、学校も職場もどうなるのか不透明です。
 
メディアで発言する専門家の意見もバラバラで、参考にならない状況。
 
夫婦の意見も異なりがちで、「父母のダブルバインド」をしかけてしまいやすい状況なのです。
 
さらにそれだけにとどまらない。
 
先が見えない状況のなかで、父親の言うことがコロコロ変わる。
 
母親も言うことがコロコロ変わる。
 
つまり、夫婦それぞれが子供にダブルバインドをしかけてしまう。
 
そうすると父母二人がかりの「四重の拘束」となり、子供は地獄の苦しみを味わうことになります。
 
わずかに残っていた「自由のかけら」さえ失ってしまうかもしれません。
 
それだけは、なんとしても避けたいところです。
 
ではいったいどうすればいいのでしょうか?
 
 

┃「父母のダブルバインド」の解決策

まず重要なのは、自分一人でかけてしまっているダブルバインドをチェックすること。
 
次に「父母のダブルバインド」をチェックしましょう。
 
パートナーと合意が取れていない点、自分とパートナーが矛盾している点をチェックしましょう。
 
そして、これらが親の一人よがりにならないよう、お子さんからも話を聴きましょう。
 
このときに、ものすごく注意しなければならないことがあります。
 
それは、すぐにお子さんが正直に話してくれることはめったにないということです。
 
だからなん回も、でもしつこくならないように、ていねいに声をかけ、時間をとり、正直に話をしてくれるようになるのを辛抱づよく待つ必要があります。
 
どうしても話しにくそうにしているのなら、手紙やメールでもらうのもいいでしょう。
 
また、自分を子供の「味方」の側に置いて、パートナーを「敵」にするような話の聴き方も避けた方がいいでしょう。
 
子供にとっては、どちらも大切な親です。
 
あくまでも「父母どちらも子供に迷惑をかけている側」として、誠意をもって反省しながら話を聴くことが重要です。
 
なにも言わなかったとしても、「隠さなくていいんだよ」と無理に詰め寄らないようにしましょう。
 
もしお子さんが「自由」を奪われてきたのだとしたら。
 
自分の気もちに気づけるようになるには、たいへんな時間がかかるのですから。
 
 

┃子供の「自由」を守るのが親の最大の役目

もちろんパートナーへの対処も重要ですよね。
 
じつは、こちらの方がやっかいだと思う方が多いでしょう。
 
いったいどうしたらいいのでしょうか?
 
それは「徹底的に話し合う」しかありません。
 
「そんな当たり前な!」と思われたかもしれません。
 
でも、ここを通らずして「真の解決」はありえません。
 
話し合いができない状況なのだとしたら、「書き合う」という方法にチャレンジしてみるといいかもしれません。
 

参照記事
家族同士が、家庭の問題を解消していくために書き合う方法を解説しています。
「 家族が上手に話し合う方法とは?

 
もちろん、パートナーが話し合いにも書き合いにも応じない場合もあるでしょう。
 
また、
 
「俺が悪いっていうのか?」
 
「私が悪いっていうの?」
 
とパートナーが怒り出すかもしれません。
 
それでも、お子さんの「自由」を取り戻すためには、根気づよく呼びかける必要があります。
 
ただ、それだけならまだマシな方かもしれません。
 
話し合おうとしても、茶化したりふざけたりして、いつまで経ってもこの話題を真に受けようとすらしないパートナーもいるでしょう。
 
もしもパートナーが、そのような態度をとりつづけるのであれば。
 
そんな人は、もはや「家族」ではありません。
 
たんなる「共同生活者」です。
 
子供の「自由」を守ることは、親の最大の役目の一つです。
 
それを放棄しているもののために、多大な時間と労力を費やすのは懸命とは言えないでしょう。
 
さっさと切り捨てることを、真剣に検討した方がいいかもしれません。
 
子供の「自由」を奪いつづけている自覚すらもてないものは、もはや親とは呼べないのですから。
 
アダルトチルドレンの子育てを支える会会長
生きづらさ専門カウンセラー
しのぶ かつのり

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