我が子へのマナー第7回

┃学校が悪いのではなく「〇〇」が悪いだけ

「学校なんていらない!」
「学校に行く意味はない!」
 
そんな発言が目立っていますよね。
 
私は、学校という場所で、長年しんどい体験をしてきました。
 
教師や同級生にも迷惑をかけ、私自身も強烈な苦痛を味わってきました。
 
アダルトチルドレンパパママさんは私と同じ経験してきた方、多いです。
 
それゆえ、我が子を学校へ通わせるのをためらう方もいます。
 
私は、本人が学校に行きたくないのなら、行かなくてもいいのかなと思っています。
 
しかしそれは「学校なんて無くてもいい」という意味ではありません。
 
なぜなら、答えはシンプルで、学校が合っている人もいるからです。
 
学校という制度になじめていて、大きなストレスを感じない人もたくさんいます。
 
学校を無くしてしまえば、今度はそのような人たちが苦痛を味わうことになるかもしれません。
 
さらに、子供たちが基礎学力と日本文化で通用する社会性を身につける場として、学校は大いに活躍してきました。
 
そのおかげで、日本は戦後のわずかな期間で奇跡的な経済発展をとげることもできました。
 
私たちが今、飢えることなく生きていられるのはそのおかげが大きいでしょう。
 
だから、学校を丸ごと否定する必要はないですよね。
 
学校という制度が悪いわけではない。
 
問題は「学校以外の選択肢がない」こと。
 
学校に合わない人のために、他の選択肢を用意してこなかったことが問題なのではないでしょうか。
 
学校に、すべての子が通ってもいいでしょう。
 
しかし、その方法が合わなかったときの想定が、あまりにもなされていない。
 
しかもそれがこんなにも頻繁に起きているのに、めったにないことのように扱われてきた。
 
そして、そのまま長いあいだ放置されつづけてきたこと。
 
そこが問題なのだと思います。
 
学校というもので苦しんでいる人、苦しんできた人、その方たちのご相談を日々お受けするなかで、痛切にそう感じます。
 
 

┃学校は「当たり前」ではなく、かなり「独特」なコミュニティ

変な帽子をかぶって同じ髪形をし教室に座っている女の子たち

ここで一つ確認しておきましょう。
 
学校に合う人と合わない人がいるのは当然です。
 
なぜなら学校は、かなり「独特」なコミュニティだからです。
 
まず、同じ年齢の子たちだけを集め、40人くらいで区切る。
 
しかも、そのメンバーを固定してしまい1~2年ものあいだ一緒に暮らす。
 
よく考えると、これだけでもけっこう「独特」な考え方ですよね。
 
さらに、そこに担任教師まで固定してしまう。
 
そして、朝は行く時間が決まっていて、帰る時間も決まっている。
 
みんな一斉に同じ内容を学び、みんなで同じものを食べる。
 
食べ終える時間までもが決まっている。
 
子供の頃から、それが当たり前だったので変だと思わない人も多いと思います。
 
ただ、こうやって見るとずいぶんと条件が細かい。
 
これは決して、放っておいても自然に成立する「当たり前」のコミュニティではありません。
 
国や資本家の側が意図的に条件をたくさんつけた「独特」なコミュニティ。
 
それが学校なのです。
 
だから、合わない人がいるのは、ものすごく当然のことなのです。
 
 

┃「不登校児」という不可解な言葉

「不登校」のご相談も絶えません。
 
ご自身がアダルトチルドレンパパママであるがゆえに、我が子がそうなってしまったのではないか・・・。
 
そんなふうに心を痛めている方も多いのです。
 
ただこの「不登校」という問題も、学校以外に選択肢がないから生じてくるものです。
 
学校以外に選択肢がないから、「学校にいけない」=「大問題」にどうしてもなってしまうわけです。
 
義務教育がもたらされる環境が他にもあれば、ここまで問題にはならないでしょう。
 
だから「不登校」とは、じつは本人ではなく制度の不備をあらわす言葉なのです。
 
ちなみに、教育の義務を規定した憲法に「学校」という言葉は出てきません。
 
しかし、昭和39年の最高裁での判例をもとに、「義務教育」とは「就学(学校に入る)」こととするのが通例になっています。
 

参考文献
文部科学省「教育基本法第4条(義務教育)」

 
であれば、ことさら学校の「種類」を増やしたいところです。
 
つまり、学校と呼べるものの「幅」を広げるということですね。
 
そうすれば「不登校児」という不可解な言葉もなくなるはずです。
 
だって制度側の不備なのに、まるで本人の方に責任があるかのような誤解を生む言葉ですからね。
 
そんなもの、さっさと捨ててしまいましょう。
 
今の学校に合わない人がいる。
 
しかも義務教育がはじまって100年以上経ち、毎年たくさんの人が学校に行けなくなっているのですから、そのことはとっくにわかっているはずです。
 
にもかかわらず、私たちの社会がここまで「学校」にこだわってしまうのは、学校以外に選択肢がないことが大きな要因の一つでしょう。
 
 

┃社会はなぜ学校にこんなにもこだわるのか?

学校以外に選択肢がないから、学校にこだわらざるをえなくなる。
 
ではなぜ、学校以外の選択肢をつくることを、私たちの社会は拒んできたのでしょうか?
 
もちろん、よく言われるように「富国強兵」といった国家観や「管理しやすい」からという行政的な理由が大きいでしょう。
 
さらにここでいろいろな言説を、専門書から引っ張ってくるのも意義あることかもしれません。
 
ただ・・・。
 
ここでは、あえて私の考えを述べさせていただきたいと思います。
 
学校以外の選択肢がない理由。
 
それは「おっくうだから」です。
 
バカにしているのかという声が聞こえてきましたが、少々お待ちください。
 
いたって真面目です。

そして教育関係者の方々の熱意や努力を否定しているわけでもないのです。
 
「おっくう」をあなどってはいけません。
 
私はカウンセラーという仕事を長年しています。
 
人が現状を変えるというのは本当に難しいということを、日々、目の当たりにしています。
 
とんでもなく「おっくう」なことなのです。
 
それを社会制度単位でやるというのは、並大抵の「おっくう」では済まされないということです。
 
さらに、教育行政を担ういわゆる「お役所」は、大きな変化を生み出すことが苦手なようです。
 
税金を使うわけですから、慎重であるのは当然のことです。
 
ただ公務員のご相談者様たちが口々に言うのは、そのレベルが「ハンパない」ということ。
 
なかには、
 
「うちの職場にとっては、現状維持が正義なんです・・・」
 
とすら言う人も少なくありません。
 
その風土のなかにあっては、国規模で維持している制度を変えるなんて「おっくう」のなかの「おっくう」。
 
「キング オブ おっくう」だと言えるでしょう。
 
であれば、今ある制度のなかで「なんとかしよう」としてしまうのは自然な流れ。
 
その負荷が我が子にかかってしまっては、たまりませんよね。
 
となったら・・・自分たちで解決策を考えるしかないのです。
 
 

┃「社会の進化」に「学校の進化」がついていけない時代、いったいどうすればいいのか?

デジタル化しようとしてうまくいっていない教室の様子

もちろん、やみくもに学校を毛嫌いして対立する必要はまったくありません。
 
仕事柄、教師をはじめとした教育関係者の方々からご相談をお受けすることも多いです。
 
みなさん、本当に熱心に仕事に取り組んでおられます。
 
ただ、個人の力だけではどうしようもない。
 
「社会の進化」に「学校の進化」がついていけていないのが実情です。
 
ましてや、すさまじいスピードでテクノロジーが発達を遂げているなか、その進化の差はひらく一方です。
 
それゆえ、学力の面で言えば、学校より効率的に学べるプラットフォームもあらわれました。
 
ネットで有名講師の授業が受けられるサービス。
 
タブレットで自宅でなんどでもわかりやすく教えてもらえるサービス。
 
学校以外で、充分に学力をつけられる選択肢は急速に充実しています。
 
学力以外の面でも同じです。
 
フリースクールをはじめ、自分に合った社会性を学校以外で身につけられる教育機関も目に見えて増えてきました。
 
ましてや「メタバース」とかカッコよく(やや恥ずかしく)言われちゃっている時代です。
 
みずからの居場所が、現実を超えてどんどん拡張されていく時代。
 
もはや、学校という極端な条件がたくさんついた「独特なコミュニティ」では、その時代を生きていくにふさわしい社会性を身につけることは難しいでしょう。
 
もちろん、そのような選択をする人に対しての偏見や差別は、まだ根強く残っています。
 
ただ、じっさいに学校以外の選択肢がどんどん増えているのは、まぎれもない事実です。
 
「社会の進化」と「学校の進化」の差がここまで開いてしまった現在。
 
学校側も、そのような新たな選択肢を認めた方が、なにより本人のためになるとわかっているはずです。
 
だから、むやみに学校に敵対するわけではなく、本人を中心にして、学び方をともに調整していく。
 
「社会の進化」と「学校の進化」の差を無理に埋めようとするのではなく、というかもはや埋められないという「事実」を受け容れて、自分たちで新たな学び方を選択していく。
 
かんたんにはいかないでしょうが・・・、そういう時代が来たのだと感じています。
 
そして、自身が学校で苦しんできたアダルトチルドレンパパママにとって、そここそが腕の見せどころ。
 
我が子とともに、人生を切り拓く局面なのだと、私も覚悟しています。
 
アダルトチルドレンの子育てを支える会会長
生きづらさ専門カウンセラー
しのぶ かつのり

おすすめの記事